フランスのゲーム会社ユービーアイソフトが開発したオープンワールドゲーム『アサシン クリード シャドウズ』が、
黒人武将「弥助」の描き方や日本文化の考証ミス、実在の神社・団体への配慮不足などをめぐって炎上し話題になりました。
批判は国内にとどまらず海外にも広がり、発売延期や関連商品の販売中止にまで発展する異例の事態となっています。
この記事では、
- アサシンクリード シャドウズの炎上概要
- 炎上理由
- 炎上に至るまでの時系列
- SNSの反応
- ユービーアイソフトの対応
- アサシンクリード シャドウズの現在
こちらを解説していきます。
アサシンクリード シャドウズの炎上騒動とは
結論から言うと、『アサシン クリード シャドウズ』は日本の安土桃山時代を舞台にしたゲームで、
- ダブル主人公の一人である黒人武将「弥助」の英雄的すぎる描写
- 日本文化の考証ミス
- 実在団体・神社の権利や名誉を侵害
とするような表現が相次いで発覚し、国内外で大きな炎上騒動に発展しました。
シリーズ待望の日本を舞台にした新作として発表当初は大きな期待を集めていたものの、
プロモーションが始まると同時に批判が噴出し、開発元は2度にわたる発売延期を余儀なくされています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | ユービーアイソフト(フランスのゲーム会社)/ゲーム『アサシン クリード シャドウズ』 |
| 炎上時期 | 2024年7月〜2025年3月 |
| 炎上のきっかけ | 主人公「弥助」の歴史描写、日本文化の考証ミス、実在団体・神社への配慮不足 |
| 炎上の場 | X(旧Twitter)、Change.org、国内外の報道 |
本作は当初2024年11月15日に発売される予定でしたが、
批判の高まりを受けて発売日は2度延期され、最終的に2025年3月20日に発売されています。
なぜアサシンクリード シャドウズは炎上したのか
アサシンクリード シャドウズが炎上した理由は、大きく分けてこちらの4つ。
- 弥助の歴史描写
- 日本文化の考証ミスとアセットの無断使用
- 実在団体・神社への不敬
- 周辺商品のデザイン
主人公「弥助」の歴史描写を巡る問題
弥助は織田信長に仕えたアフリカ系黒人で、当時の史料にもわずかながら記述が残る実在の人物です。
しかし残された歴史記録は極めて少なく、信長の側近や従者だったという解釈が一般的であるのに対し、
開発元は弥助を「圧制者から日本を救う伝説の侍」として極めてヒロイックに描写しました。
さらにデモンストレーション映像では、弥助が白昼堂々と農村で敵を惨殺し、首を斬り落とす様子が描かれており、
伝統的な侍のイメージとかけ離れた野蛮な描写だとして国内のユーザーから強い反発が起こりました。
これに対し開発側が「当時の日本では斬首が日常茶飯事の光景だった」と釈明したことも、事実とは異なる過度な野蛮化だとしてさらなる批判を招いています。
この弥助像には、元日本大学准教授のトーマス・ロックリーさんによる2019年の著作が影響しているとされ、
多言語版Wikipediaの「弥助」の項目が侍として既成事実化するように何度も編集されていたこと、
その編集者がロックリーさん本人ではないかという疑惑も浮上しました。
ロックリーさんが開発元の公式ポッドキャストに出演していたこともあり、
開発チームが偏った歴史解釈をそのまま採用したのではないかという不信感が広がり、
署名サイトChange.orgでは発売中止を求める署名活動が始まり、2024年7月時点で8万人を超える署名が集まる事態になりました。
日本文化の考証ミスとアセットの無断使用
開発元は「正確な歴史を描いている」とアピールし、日本の専門家の監修を受けていると主張していましたが、
公開されたトレーラーやコンセプトアートには基礎的な調査不足がいくつも見つかりました。
- 畳が本来の長方形ではなく正方形として敷き詰められている
- 武士が畳の縁を踏んで歩く描写がある
- 左右反転した中国様式の仏像が日本の寺社に配置されている
- 戦国時代であるにもかかわらず1700年代以降の建築物や現代のガードレールのようなものが写り込んでいる
これらのミスは、画像生成AIで作られた素材が十分に検証されないままアセットとして流用された可能性を示すものだったようです。
さらに日本語吹替版のトレイラーに中国語の字幕が表示される編集ミスや
二条城の障壁画を無断で模写・改変して使用した疑い、
営利利用が禁じられている東大寺大仏殿の八角燈籠を無断でゲーム内に組み込んでいた問題も指摘されています。
2024年7月にパリで開催された「ジャパンエキスポ」のユービーアイソフト・ブースでは、
「弥助の刀」として展示された日本刀が、
漫画『ONE PIECE』のキャラクター「ロロノア・ゾロ」が持つ架空の刀「三代鬼徹」の模造刀だったことが来場者に見破られています。
織田信長と『ONE PIECE』の作者・尾田栄一郎さんを混同したのではないかという憶測を呼び、
監修のずさんさを表す出来事として国内外で失笑と怒りを買いました。
著作権侵害と宗教施設への不敬
コンセプトアートには、岐阜県関ケ原町で活動する市民団体
「関ケ原古戦場おもてなし連合『関ケ原鉄砲隊』」が使う旗印が、許可なくそのまま使用されていることも発覚しました。
さらに深刻だったのが、兵庫県姫路市に実在する神社「播磨国総社 射楯兵主神社」が実名で登場し、
境内で主人公が文化財や器物を破壊するシーンが公開されたことです。
実在の社殿での狼藉描写が現実世界での模倣行為を誘発しかねないとして、神社側は強い懸念を表明しています。
周辺商品の不適切なデザイン
ライセンス商品を手掛けるフィギュアメーカーのPureArts社が発表したフィギュアの台座デザインも、大きな批判を招きました。
台座に使われた破損した鳥居のデザインが、1945年の長崎への原子爆弾投下で片半分が吹き飛んだ山王神社の被爆遺構「一本柱鳥居」に酷似していたためです。
原爆の惨禍と平和への祈りを意味する厳粛な遺構を、戦国時代を題材にしたエンターテインメント商品のデザインパーツに使ったことは
「日本の歴史的悲劇に対する配慮を著しく欠いている」として、国内外から強い非難を浴びました。
アサシンクリード シャドウズの炎上を時系列で解説
2024年7月8日:関ケ原鉄砲隊の旗の無断使用が発覚し謝罪
ユービーアイソフト日本支社は公式X上で、市民団体「関ケ原鉄砲隊」の旗印を無断使用したことを認め謝罪しました。
ただし、すでに製造されたコレクターズエディション同梱のアートブックについては収録内容を変更せず、
それ以降の新たな使用のみを停止するという方針だったため、権利侵害をそのまま放置して販売を継続する姿勢が不誠実だとしてさらなる批判を招きました。
2024年7月中旬:ジャパンエキスポで「弥助の刀」が模造刀と判明
パリで開催された「ジャパンエキスポ」のユービーアイソフト・ブースで「弥助の刀」として展示されていた日本刀が、
『ONE PIECE』のキャラクターの架空の刀の模造刀だったことが来場者に見抜かれ、SNS上で拡散されました。
2024年7月23日:日本コミュニティ向けに公式が釈明
相次ぐ批判を受け、ユービーアイソフトは開発チーム名義で日本コミュニティに向けた釈明の投稿を行いました。
しかし具体的な問題解決やアセット削除に踏み込んだ内容ではなかったため、数千件の批判的な返信やリポストが集中する結果となりました。
同じ頃、署名サイトChange.orgでは発売中止を求める署名が8万人を超え、批判の規模を可視化する形となっています。
2024年9月:発売延期を発表(2025年2月14日へ)
ユービーアイソフトは「さらなる磨き上げ」と「主要機能を含むゲームプレイ体験の改善」を理由に、当初2024年11月15日だった発売日を2025年2月14日へ延期すると発表しました。
同時期に同社が発売した『スター・ウォーズ 無法者たち』の販売が想定を下回っていたことも、この戦略見直しの理由の一つだったとされています。
2024年9月19日:PureArts社がフィギュアを予告
PureArts社が公式ライセンス商品「Qlectors 弥助&奈緒江」のフィギュアを発表し、予約受付を告知する投稿を行いました。
この時点では大きな問題視はされていませんでしたが、
後にこのフィギュアの台座デザインが長崎の被爆遺構に酷似していると指摘され、大炎上に発展することになります。
当時の予約告知の投稿はこちら
(サイトは英語です)
2024年10月:PureArts社が謝罪しフィギュア販売を中止
フィギュアの台座が長崎・山王神社の被爆遺構「一本柱鳥居」に酷似しているとして猛烈な非難を浴びたことを受け、PureArts社は謝罪文を公開しました。
同社は当該製品の販売を即座に取りやめ、デザインを完全に白紙に戻して再構築することを発表しています。
2025年1月9日:再延期を発表(2025年3月20日へ)
Assassin's Creedのグローバル公式アカウントが、コミュニティからのフィードバックを反映するためとして、
発売日を2025年3月20日へ再度延期することを発表しました。
2度目の延期発表となったこともあり、ゲームの完成度に対するユーザーの不満や諦めの声がタイムライン上に溢れる契機になったようです。
2025年1月:Steamページから「侍」表記をサイレント修正
ユービーアイソフトは、Steamストアページにおける弥助の説明文からそれまで記載されていた「侍」という表現を、告知なく削除しました。
2025年2月中旬〜3月10日:射楯兵主神社が抗議文を送付
兵庫県姫路市の射楯兵主神社および兵庫県神社庁は、フランスのユービーアイソフト宛てに
「断固抗議する」とする日本語および英語の抗議文を直接送付しました。
神社側は、実在の社殿での狼藉描写が現実世界での模倣行為を誘発することを深く懸念していたとされています。
2025年3月20日:抗議を黙殺したまま発売
ユービーアイソフトは射楯兵主神社からの抗議に一切の返答や対話を行わないまま、予定通り本作を発売しました。
神社側の抗議を黙殺した形での発売は、後に報道でも取り上げられ、企業のコンプライアンスや倫理観が厳しく問われる結果となっています。
SNSの反応
X(旧Twitter)上では、弥助の描写や文化考証ミスが発覚するたびに批判的な投稿が相次ぎ、関連するハッシュタグがトレンド入りする状況が繰り返されました。
特に、実在の神社を舞台にした破壊描写や、長崎の被爆遺構に酷似したフィギュアの台座デザインについては「日本の歴史や宗教への配慮が足りない」という声が国内外から数多く寄せられたようです。
一方で、歴史フィクションとしての表現の自由を尊重する立場から、批判の過熱ぶりを疑問視する声もSNS上には一定数存在していました。
ユービーアイソフト日本支社の謝罪投稿や公式声明には、いずれも数千件規模の批判的な返信やリポストが寄せられており、企業側の対応が不十分だと受け止められていたことがうかがえます。
ユービーアイソフトの対応
関ケ原鉄砲隊の旗印無断使用については、2024年7月8日に公式Xで謝罪したものの、
すでに製造されたアートブックの回収は行わず販売を継続するという中途半端な対応にとどまりました。
射楯兵主神社からの抗議に対しては、返答や対話を一切行わないまま発売を強行しており、こちらは謝罪すら行われていません。
一方で、ライセンス商品を手がけたPureArts社は、フィギュアの台座デザインが問題視されると比較的早い段階で謝罪し、販売中止とデザインの全面見直しを決めています。
経営トップの発言にも注目が集まりました。
イヴ・ギルモCEOは、騒動について「特定の政治的アジェンダを押し付けることが目的ではない」と釈明しつつも、
批判が「ファンとの戦い」に変質したと捉えるようなコメントを残しており、
ユーザーの正当な批判を単なる攻撃として処理しようとする姿勢が透けて見えるとの指摘もなされています。
副社長兼エグゼクティブプロデューサーのマーク=アレクシス・コテさんは、
BAFTA(英国映画テレビ芸術アカデミー)の講演で「多様性とインクルージョンへの取り組みは歴史的正当性に基づいている」と主張しましたが、
実際には制作の後期になってようやく歴史家や専門家を導入していたという内部証言もあり、開発体制の不備が改めて浮き彫りになりました。
社内でも動揺が広がっていたとされ、南北戦争後を舞台に黒人の元奴隷を主人公とする未発表の新作企画が「政治的すぎる」として中止になっていたことや、
主要タイトル『アサシン クリード コードネーム Hexe』のゲームディレクターを含む複数の開発リーダーが退職していたことも明らかになっています。
アサシンクリード シャドウズの現在
2026年8月時点で、『アサシン クリード シャドウズ』は2025年3月20日に発売済みで、
周辺商品については問題の内容によって対応が分かれた状態が続いています。
| 関連商品 | 推定価格 | 問題となった点 | 現在のステータス |
|---|---|---|---|
| コレクターズエディション同梱アートブック | 279.99ドル | 関ケ原鉄砲隊の旗印を無断使用したコンセプトアートを収録 | 削除・回収は行わずそのまま販売 |
| Qlectors 弥助&奈緒江 フィギュア(PureArts製) | 約70ドル | 長崎・山王神社の被爆遺構を模した台座デザイン | 販売中止、デザインを全面見直し中 |
| アニムス 弥助 1/8スケールスタチュー(PureArts製) | 未公表 | 天守閣を模した台座とLED発光のアニムス演出 | 2026年第1四半期に出荷予定、予約継続中 |
| アサシンクリードシャドウズ限定将棋セット(PureArts製) | 200ドル | 特になし | 2026年第1四半期に出荷予定、予約受付中 |
ユービーアイソフトはこの騒動と前後して経営面でも苦戦が続いており、発売延期を繰り返した本作に加え、
同時期に発売した『スター・ウォーズ 無法者たち』の不振も重なり、開発戦略の見直しを迫られる状況が続いています。
社内では複数の開発リーダーの退職や新作企画の中止も明らかになっており、
今回の炎上騒動がユービーアイソフトの組織運営そのものに影を落とし続けているようです。
まとめ
- アサシンクリード シャドウズは弥助の英雄的すぎる描写がきっかけで炎上した
- 炎上理由は歴史考証ミス、アセットの無断使用、宗教施設への不敬など複数ある
- 関ケ原鉄砲隊の旗印無断使用は謝罪されたが商品回収は行われなかった
- 射楯兵主神社からの抗議はユービーアイソフトに黙殺された
- PureArts社は被爆遺構に似たフィギュアを謝罪し販売中止にした
- 発売は2度延期され2025年3月20日に実施、現在も一部商品の見直しが続いている